「<所得税改革>基礎控除の拡大検討 低所得層の負担減」の向こうに

これは毎日新聞の記事をヤフーニュースが流したものだが、
見出しを見た瞬間嘘?でしょという言葉が口をついて出た。
よく読むと、給与所得控除を下げて、その代わりに基礎控除を増やそうというものだ。
決定ではなく、政府税調と自民税調が「検討」となっている。
無論法律を変えるのであるから、決定には当然国会で所得税改正の法案が可決されなければならない。

現在、給与所得控除は220万円で頭打ちとなっており、給与収入1000万円以上だと1億だろうが
1000万円だろうが220万円までしか控除できない。
よって高い給与収入の人にはいっぱい税金を払っていただきましょうということだ。

私の予想では、基礎控除をはじめとする配偶者控除や扶養控除といった「人的控除」は平成という元号とともに過去のものになるだろうと思っていたからこそ、嘘でしょと思ったわけだ。
税制改革大綱を読めば読むほど、財務省は税金を払う人を多くし、それもできるだけ手間をかけずにというのが読めてくる。
課税の公平には、「水平的な公平」と「垂直的な公平」という考え方があり、「水平的な公平」の代表は誰もが一律に支払う消費税であり、「垂直的な公平」は超過累進税率を取る所得税である。
この水平と垂直のバランスを取るのが政治である。
財務省は無論「水平」で広く深く、政府といえば政局がらみで「水平」はちょっとやりにくいねんけどという立場。
政局がらみとは、与党内での公明党自民党の距離感。

結局のところ、今回の「検討」は、憲法改正をしたい自民党財務省が折れたということ。
消費税率のアップに際しての軽減税率導入といい、財務省の腰は弱いなぁ。
財務省の本音は、軽減税率の真逆、「生活必需品にこそ高率を」。
これが一番楽に税収を増やす方法である。
そして次に税収を楽に増やすことができるのが、人的控除の廃止。
両方とも、財務省は腰砕けになり、人的控除の廃止の次に楽な「給与所得控除の圧縮」で手を打ったのだろう。
税の番人である税務署は人的資源が枯渇しつつあり、急速に進む企業のIT化と国際化にも対応できず
国税庁は自ら10年後には税務調査は「AI」が行うだろうといい出す始末。
そりゃ手間隙かけずに税金を集めたいわなぁ。